前回の挑戦的な記事に関連して、わが埼玉県の私立高校父母負担軽減事業に関して物申すという記事。

連発で攻める記事になっちゃいますけど…。

塾講師、個人塾経営者なんて別に偉くもないんで大層なことを言える立場じゃないのは分かってます。

でも、この仕事をやってると「勉強ってそんなに甘いものじゃないぜ。」って感じる部分とか、逆に「必死に勉強に徹底すれば見える世界が変わってくるぜ。」って感じる部分も多いんですよね。

で、そういうことって講師も生徒も、それ相応の覚悟を持って、それ相応の努力を続けてこそ感じることができる部分があって、浮ついた理想論とか浅はかな手助けで見える世界ではないような気がするんです。(当然、私もまだまだ努力が必要な人間の一人ですけど。)

勉強なんて究極、やりたい奴はやればいいし、やりたくない奴に手を差し伸べてまでやらせる必要がどこにあるのか?って考えから前回の母子家庭割引についての記事になったんですが。

まあ今回も話の流れは一緒。でも、今回の方がより重い。行政がかかわっている話ですから。私立高校の無償化ってやつです。全国的には2020年からの開始が調整されているんですかね?実は埼玉県ではすでに始まっているようなところがありますけど…。

教育の機会均等とかね、経済的理由だけで勉強を断念させて未来の人材を失わせるとかね、いろいろ理想や理由はあると思いますけど、実際起こってることってもっとくだらない残酷な現実ですから…。

そもそも金がないだけで夢をあきらめる奴、勉強をあきらめる奴は、金があっても何かしらの理由であきらめるでしょ?って単純な話をなぜに理解できない人が多いのかって思うんですけどね。

埼玉県の私立高校実質無償化

現段階でも国の就学支援金っていうのがあります。

埼玉県のホームページから表を拝借。

世帯の目安年収 補助金額(年額/月額)
年収約250万円未満世帯 年額297.000円(月額24,750円)
年収約350万円未満世帯 年額237,600円(月額19,800円)
年収約590万円未満世帯 年額178,200円(月額14,850円)
年収約910万円未満世帯 年額118,800円(月額9,900円)

この国の就学支援金にプラスして、埼玉県ではすでに年収609万円までの世帯には私立高校の授業料が実質無償化となるように補助金が出ています。

一人当たりの平均補助額が全国で3位らしいんですね。

ま、ホントに教育業界にいない人からしたら「恵まれない子供に愛の手を」って感じで、それはそれは素晴らしい制度だって思われる方も大勢いるかもしれませんけど…。

私は全然そうは思えない部分がたくさんあります。(きっと埼玉県の塾講師の中には私と同じように思ってる人がたくさんいると願ってます!)

埼玉県の私立高校のいわゆる確約制度

wikipediaでも「合格確約問題」なんてページがあります。

わが埼玉県では当たり前のように使われてる制度ですよね。

内申点、業者模試の成績で、私立高校の合格がほぼ決まってしまうって制度。(「ほぼ」って9割とか9割5分とかそんな生ぬるい数字じゃないですよ。多くの私立学校で、9割9分9厘って言ってもいいくらいです。)

もちろん、私の塾の生徒もほぼ100%がこの制度を利用して受験に臨みますけど、私の塾の場合、多くの生徒が「併願受験」での確約をとることになります。第1志望が公立高校になりますので、つまり滑り止めの確約をとるってこと。

で、これならそれほど悪いことじゃない、と私は思ってます。「併願」の場合はそれなりに勉強を頑張らないと確約が取れませんし、第1志望の公立受験のために3月まで勉強は続けますから。

問題は「単願」です。「単願」の場合は、その私立高校しか受験しませんよ、で合格したら必ずその私立高校に入りますよって受験です。(塾の先生方にこんな基本的な話をする必要もありませんが…。一応、塾関係者以外も見てるかもしれないので。)

で、「単願」受験の場合は「併願」受験に比べて、確約の基準が相当に甘くなるわけです。単純に偏差値で併願受験より2,3低くても確約が出ますし、その他色んな優遇が単願受験には適用されたりします。

私立高校も企業ですからね。売上あげてなんぼの世界であることは間違いないです。入るかどうか分からない「併願」受験者よりも、絶対に入学してくれる「単願」受験者を優遇するのは当たり前なのかもしれません。

われわれからしたら、「おいおい、そんな成績で入って大丈夫かよ…?」って生徒でも「単願」受験ならねじ込んで合格なんてこともザラにあります。

で、ここからが本当のポイントなんですけど、私立高校の確約って早ければ9月には出ちゃいますよね?10月中には多くの生徒が確約をもらいます。ま、遅くても11月。

学習塾関係者なら当然のように分かりますよね、この単願確約の負の側面。

私立高校の単願確約をもらった瞬間から生徒が勉強を辞めるって現象。

当たり前です。確約もらったらほぼ合格なんです。多くの中学生にとって勉強する意味って何ですか?高校受験に合格するためでしょう?(将来のためなんて殊勝なことを考えている中学生はほぼいません。私の塾にもいませんし、そもそも私自身も高校受験のために勉強していましたし。)

合格が決まっているのに努力するなんて普通出来ないんですよ。大人だって10億円手に入ったら、仕事ほっぽり出してハワイ島かバリ島に行くでしょ。

ダメなヒトダメなヒト

俺ならモルディブ!

9月、10月で勉強を辞めた奴がどうなるか。学習塾関係者だったら嫌というほど見てきているはず。「私立高校は公立高校よりも指導が手厚い」なんてお題目が吹っ飛ぶ現実が、入学後には待っている訳です。(入学初っ端から勉強について行けない現象ですよね。指導が手厚いもクソもない状況ですよ。)

成績を伸ばせない学習塾の進路指導

世の中には成績を伸ばせない学習塾がたくさんあります。

それはもう、他塾から転塾してくる生徒を多数抱えるMr.M塾は現実を目の当たりにしている訳で…。

で、ここからは私の想像になっちゃいますけど、成績を伸ばせない学習塾ってどういう進路指導をするのかなって。

競争率が高い公立高校受験を勧めるって方針はやっぱり取りづらいですよね、きっと。

だって成績伸びてないんだから不合格のリスク、高いじゃないですか。

より安全に、より確実に、そんな受験を考えるかもしれませんよね。

そこで出てくるのが「私立高校の単願受験」です。

ほぼ確実に合格しますから。成績を伸ばせない塾にとっては救世主です。

学習塾関係者の方にこんなこと言ってもあれですけど、私立高校によっては「塾の先生の名刺を持っていけば加点1」なんて高校もあるって聞きます。(私は私立高校の説明会とか、ほとんど行かないんで詳しくは分かりませんよ。この記事を読んでる方で私より全然詳しい人はたくさんいるはずです。)

「大丈夫だ、俺が何とかしてやるから〇〇高校の単願受験をしろ!」って、何も知らない生徒にカッコつけて言えば「おお、さすが塾の先生。頼れるぅ~♪」なんて思われるかもしれませんし。

正直、私もある私立高校に昔からの知り合いがいて、その学校の単願受験であれば「数名なら何とかする。」って話を受けています。(当然、その話を受けたことはないですけど。)

合格実績を見ると、異様に私立高校の数が多い塾もありますよね。で、そういう塾のホームページが何か生ぬるい感じだったりすると、「あれ~単願受験進めてるのかなぁ?」とか思ったり。邪推かもしれませんけどね。

悪魔のトライアングルが何を引き起こすか?

「私立高校無償化」「高校合格確約制度」「成績を伸ばせない学習塾」この悪魔のトライアングルが何をもたらすか?

もう分かりますね?

中学生の学習機会を奪うってことですよ。

これ、タチが悪いですよ。

3つとも「教育の機会を与えよう」って存在なんです。

3つとも建前上は「よりよい学習の機会、よりよい学習環境を手に入れましょうよ。」って存在なんです。

その理想論に隠れて確実に多くの中学生が学習の機会を奪われる現実があると。

①高校無償化によって今までなら金銭的にあきらめざるを得ない私立高校に行けるようになる。

②成績を上げられない塾の先生が、不合格を出さないために単願受験で基準に達する私立高校を探してくる。(厄介なのが私立単願の場合は、通常その生徒のレベルじゃ届かない高校が届いたりするんですよね。簡単に言えば生徒や保護者からするとお得に感じるわけですよ、「えっ?うちの子(自分)がその高校に行けるの?やった!」みたいに…。)

③私立高校は単願確約を出す。早ければ9月中に…。

で、この①~③の流れに上手~く乗るのは、学業の志高き生徒じゃないんですよ。「うちは金がないけど、この制度のおかげでレベルの高い高校行って将来のための勉強が存分にできるぞ!」なんて青空の下でこぶしを高々上げる清く正しい生徒なんてほぼいないんです。

実際は「勉強しなくても高校行けるぜッ!ラッキー♪早く単願で決めて遊んじまおう!」って生徒が多いんです。

こういう生徒たちに高校無償化の税金を投入して、高校に入学するまで遊び惚けさせておいて、教育の機会均等、将来の優秀な人材の確保って…おかしくないですか?高校受験のラスト3か月以上の貴重な学習期間を奪っているとさえ思うんですけど…。

能力や意識が高い生徒たちは、金のあるなし関わらず、安易にこの流れに乗りませんよ。

たぶん分かっているんでしょうね。この甘えを許すようなシステムに乗ると、自分のためにならないって。15歳の自分は必死こいて勉強して勝負をしないといけないんだって。

むやみな割引とかタダって言うのは人を腐らせる

ちょっとくだらない例になりますけど、私は一時期、同級生が働いている美容室に通っていたことがあるんですね。

何でかって?

「友人割引」なるものが適用されていたからなんです。

で、ある日突然その割引が消えた。

ま、同級生ってだけで友人ではなかったんで、「あ、やっぱ友人じゃなかったんだ。」って笑っちゃったんですけど。

その後、もっと家の近くで料金もそれほど高額じゃなく、腕も確かなところを探したんです。で、その友人?よりも確実に腕のいい美容師さんを見つけたんですけど…。

何が言いたいかっていうと、こんな事ですら自分は「割引」ってことに甘えて、より腕がたつ美容師を探す努力を何年も怠っていたわけです。(友人?が下手くそってわけじゃないですよ。)自分にとってベストな美容室を探す努力を「友人割引」だけで怠っていたんです。

今通ってる美容室は以前の美容室と比べれば、家から3分の1くらいの距離。料金も安い。腕もいい。それを何年も見つけられなかったことって、たとえ「友人割引」があったとしても損だと思います。

高校無償化って、教育の機会均等、将来の人材確保、崇高な理念や理想があるのかもしれません。

でも、多くの人間が(もちろん私も含めて)、そんな崇高な理念や理想で毎日を生きてるわけじゃないですよね。

楽をしたい、休みたい、金が欲しい、そういうことの方が日々の行動原理になってるでしょう。

高校無償化で掲げた崇高な理念を正しくキャッチできる人がどれだけいるのか?それよりも、日々の行動原理、「楽してタダで入れるなら入っちゃえ。」で利用するのが人間な気がします。(私だって同じ状況なら「楽」に流れるような気がしますし。)

ま、私みたいな一介の塾講師、塾経営者が何を吠えたところで無意味なことは分かっていますけど。

一握りでも志ある若者が救われるなら「それはそれでいいか…。」ってあきらめるしかないんでしょう。