自立型個別指導塾って聞いたことありますか?まあ学習塾業界に関わる人間であれば、大体の人は聞いたことがありますよね?

最近増えてますよね~、自立型個別指導塾…。

前回の記事で「簡単に手に入るもの」には価値がないという話をしました。私個人的にはこの自立型個別指導塾っていうのも、まさに「簡単に手に入るもの」だと思うんですよ。金さえ払えば誰でも手にできる「システム」…。

こんなことを言ったら「テメェに何が分かる!」って自立型個別指導塾を経営している方たちに怒られそうですけど…。

でもね、自立型個別指導塾(というか名称がそもそも長いな…。)をうたっている塾のホームページ見てください。(もし、自身が経営されている場合には一度自分のホームページを見返すといいかもしれません。)

どうですか?どこもかしこもシステムばっかり謳ってません?「完全オーダーメイド指導」とか「次世代型個別指導」とか「ハイブリッド学習」とか…。

ダメなヒトダメなヒト

オーダーメイド…?次世代型…?ハイブリッド…?💡!ト〇タの新車が出るのか!

冗談じゃなくて、お客様はそういう言葉を聞いて「へぇ~オーダーメイド何だぁ!」とか「次世代型、すごいッ!」とか、一切思わないですからね。「よく分からん。」で終わりです。で、人間「よく分からん。」ものに興味はでません。

「オーダーメイド」も「次世代型」も「ハイブリッド」も、「塾生偏差値平均60以上」の一言に木っ端みじんに駆逐されます。

ここ5年くらいで自立型個別指導塾がメチャクチャ増えたと思うんですよね。で、何となくですけど、次の5年くらいで自立型個別指導塾がそこそこ潰れていくと思うんですよね。いや、なんとなくの予想ですよ。まあ一応、Mr.M的根拠はこの後書いていきますけど…。

予想外れて「自立型個別指導塾は皆ガッポガッポ儲かってる!」って未来になっても怒らないでください…。1999年にあの高名なノストラダムス大先生だって予言外しているんですから。あの競馬の神様、大川慶次郎氏だって結構予想は外してたんですから。

自立型個別指導塾とは?

まあこのブログを読んでくれている人は学習塾関係者が多いと思うんで、ホント簡単に説明しますよ。

パソコンを使って生徒たちに学習させるってやつですよね。生徒がパソコンから問題を選んでやって、解説なんかもパソコンがやってくれて…。生徒が「自立してパソコンを使って勉強できる」っていうのが謳い文句だと思います。

で、何がメリットかっていう話ですけど、これは経営者に強烈にメリットがあるんですよね。「生徒が自分で問題をやって、解説までパソコンがやってくれる」んで、手間がかからない。もっと言うと、従来型の個別指導塾に比べ人件費が格段に低く抑えられる。

だって生徒たちの管理をする塾長一人でいいんだから。解説はパソコンがやってくれるんですから。塾長はホントに最後の最後、どうしてもわからなかったときに出ていくだけで良い訳です。

しかもね、生徒が自分自身でやる内容なんかも考えて学習するから、いわゆる「考える力」が身につくって話。こんな良いことないですよね?ウィンウィンの関係ですよね?

と言いつつ、学習塾ってそんなに甘くないですからね。生徒指導ってそんなに甘くないですからね。それについては別の記事でガンガン書こうと思いますけど、一つだけ言っておきましょう。

あなた自身がダイエットするとして、パソコンにその日その日の運動メニューが提示されて、それでその日その日の食事も提示されて、データ化する機能もあって…というシステムがあるとするじゃないですか?(調べたらそういうアプリありますね、普通に。)で、それ使って痩せられますか?って話なんです。

そんなんじゃ痩せられない人が大勢いるから、スポーツジムがあってライ〇ップがあるんですよね?大人だってそうなんですから。人間の成長には人間による介入がメチャクチャ重要だと私は思いますけどね。

ある自立型個別指導塾の試算

自立型個別指導塾のシステムを売っているある会社のサイトに、開業資金や年商についてのシュミレーションが載っていました。

それをいちいちMr.M的にツッコんでいきます!

開業資金にツッコミ

店舗面積10坪~15坪想定。座席数10席~16席。

加盟金 0
システム導入費 0
物件取得費(保証金、前家賃、仲介手数料) 600,000
開校サポート研修受講料 300,000
販促費(10万枚のチラシ) 700,000
ホームページ作成費 300,000
什器備品費(イス、机、パソコン、書籍など) 300,000
内装工事費 500,000
看板設置費 300,000
合計 3,000,000

物件取得費

600,000円は結構高いな、という印象です。

10坪程度であれば、自分で教室探して自分で交渉なら400,000円くらいで行ける気がします。敷金、礼金は交渉次第で全然変わりますし、直接管理会社兼オーナーの物件あたれば仲介手数料はないですからね。

私はアパート1室スタートだったんで、比べたら申し訳ないですけど敷金1カ月、礼金0カ月、前家賃1か月分の126,000円で決着です。

開校サポート研修受講料

300,000円。どんな研修か分からないんで、これが高いか安いかは分かりませんけど、300,000円の研修って何やるんですかね?これだけネットで色々調べられる時代に300,000円払ってまで受ける研修ってあるのかは疑問です。個人塾経営ってそんなに煩雑な業務ないですからね、必要なことはかなり自分で調べられると思うんですけど…。(まあ授業の研修とかならいくらやっても足りないですけど、自立型個別指導ってそんなに授業研修いらなそうですし…。)

販促費

700,000円。私愛用のラクスルで考えてみましょう。ラクスルならB4両面カラーの最低単価は1枚2.5円。で、私愛用のポスティング業者であれば1枚3.3円で配布可能。つまり、1枚当たり印刷から配布まで2.5円+3.3円=5.8円。で、消費税8%を乗せると1枚約6.3円。

700,000円あれば、700,000円÷6.3=111,111枚。ということはラクスル利用で自分でやるなら10,000枚程度は多く配布できそうです。私の場合は、10000枚で1人ゲットのアベレージですので、まあ結構大きいですね。

でも、デザイン料込とかでこの値段設定なら決して高くないと思います。ここの設定は割と良心的な気がします。

ホームページ作成費

300,000円。たぶん、このくらいが相場でしょう。決して高くないと思います。ただ、私はホームページは自分で作ることを強くおススメするんで、それと比べればべらぼうに高いです。ホームページの記事に関しては色々書いてありますので、そちらを参考に。自分で作れば初期投資は5万もあれば十分なはず。

什器備品費

だいぶ前の記事で書きましたが、私の場合は生徒12名想定で260,000円程度かかっています。さらに教材費で68,000円程度かかってます。つまり私の場合、328,000円かかってますね。ここに関しては300,000円だったら全然安い気がしますね。(これ、生徒用のパソコンの代金まで含んでたとしたらかなり安いですよ。)

内装工事費

500,000円。私は内装工事費は一切かかりませんでしたね。アパートの1室をそのまま使いましたから。どうなんでしょうね、自立型個別学習塾ってパーテーションで分割したり、壁作ったり、そういうの必要なさそうですよね?壁紙張り替えるくらいじゃないですかね?10坪程度の部屋の壁紙張り替えるだけで500,000円は有り得ないと思いますけど…。(ちなみに私は壁紙張り替えたりとかも大家持ちでしたけどね。)

看板設置費

300,000円。高いか安いかは微妙です。看板の種類、看板の枚数によって金額は全然違います。看板を見ないと何とも言えないですが…。看板についても以前に記事にしています。そちらの記事をぜひ参考にしてみてください。

ちなみに私が今までつけた看板で最高額は260,000円です。これは内照式(中に電灯があるタイプ)で、長さ200㎝×幅60㎝くらいの結構目立つやつです。

よって300,000円もあれば、それなりにデカいものがつくはず、しかも電灯ありで。しょぼい看板だったら300,000円は高いです。

年商試算にツッコミ

生徒30人・雇用なし
年商 9,900,000
人件費 0
広告費 720,000
家賃 960,000
その他 1,540,000
営業利益 6,680,000

ここはツッコまざるを得ないんですね。生徒30人設定で年商9,900,000円。つまり生徒1人当たりの年間の売り上げが330,000円です。

私的にはこういうシュミレーション立てるときは絶対にデータが欲しいです。どんなデータが必要でしょう?ズバリ、学習塾の年間費用の平均ですよね。世の中の人たちが、どれくらい年間に学習塾費を支出しているかです。

文部科学省が「子供の学習費調査(平成28年度)」で発表しています。

公立 私立
幼稚園 6.2万円 6.8万円
小学校 15.1万円 32.0万円
中学校 29.4万円 26.2万円
高校 30.2万円 39.4万円

おそらく自立型個別指導塾を経営する人がターゲットとする層は公立小学生公立中学生。資料を見てどう思います?この会社が出している年商シュミレーションが結構甘いシュミレーションしてるの分かりますか?「こうであったらいいな。」シュミレーションなんですよ。(私は常に辛めのシュミレーションをしますけどね。)

現実問題、自立型個別指導塾がターゲットとする層は、年間33万円も学習塾に落とさない気がします。

「いや、これはあくまで平均値であって33万円を落とす層を集めればいいんだ。」って考え方も当然あります。でもね、私はここでメチャクチャ矛盾を感じるんですよね。

おそらく公立中学校層で、平均以上のお金を支出してくれるのは上位層ですよ。行きたい志望校が早期からはっきりしていて、成績にかなりこだわりのある層。そういう層が自立型個別指導に行きますかね?周りに小学生いたり、中1、中2がいたり、そういう環境に行きますかね?たぶん、そういう層はバリバリの進学塾行きますよね。

いろんな自立型個別指導塾のホームページ見ると上位層を集めるような謳い文句はほとんどないです。どちらかというと「学力が不安でも自分のペースに合わせて…」とかですよね?客層のターゲットが売上のシュミレーションに合ってないと思うんです。
厳しさ・甘さと授業形態相関図

上の図は、以前の記事で私が五科セット固定にするかどうか悩んだ時に、頭を整理するために作った図です。この図で言えば、自立型個別指導塾が位置するのはDゾーン。でも、自立型個別指導塾が想定する金額を支払ってくれる層は、おそらくAゾーンの生徒たちなんです。Dゾーンのお客相手に平均以上の金額を狙って戦うって、難易度MAXのストリートファイターⅡのバルログ戦ですよ。(要はかなり難しいということです…。)

「いや、学力下位層でも高所得層狙えば33万円は十分に狙える。」高所得層がホントに10坪強で座席数10数席の塾に子供通わせると思いますか?駅前の大手学習塾のきれいなビルに行かせるでしょう?自立型個別指導塾を検討する層ってのは、どちらかというと「週一回で無理なく通えて月謝も安いのがいい。」って層じゃありませんか?

さらに言うとね、「無理なく通えて」とか甘い方向性うち出すと、公立小学生は集まる傾向あると思いますよ。公立小学生の中には「何もやらせないよりは月謝安くて家から近ければ、週1くらいは通わせよう。」っていう層は間違いなくいますからね。

ダメなヒトダメなヒト

わ~い、そういう層たくさんいるならラッキー!

なんて思わないでくださいよ。とくにこの会社のシュミレーションをベースに開業した人は。公立小学生を取り込めば取り込むほど席は埋まるし、客単価は下がりに下がる。で、生徒1人あたり年間33万円という目標からは遠ざかっていくんですからね。

月謝設定にツッコミ

講習費とか特別ゼミとか一切考えないとすると、330,000円÷12か月=27500円になります。つまり、生徒一人当たりの月謝単価が27500円になる計算です。

私の印象…、月謝単価27500円は高い!この単価設定でのシュミレーションは結構強気設定だと思います。

私の塾は公立中学生が約90%を占める塾です。残り10%が公立小学生。当然、中学生の比率が大きい方が月謝単価は高くなりますよね(中学受験を開校してなければ)。90%が中学生という生徒比率でも、私の塾の月謝単価は20,000円~22,000円程度です。

ちなみに私の塾は、自慢になりますが地域では「そこそこ成績が上がる。」という評判はあると思います。(圧倒的にとか、唯一無二とかそういうレベルではないです…。まだまだですね…。)埼玉県で学習塾に携わっている人なら大体の感覚は分かると思いますが、受験生の北辰偏差値の平均は55~57程度です。繰り返しますけど、このくらいの塾でも月謝の客単価は20,000円~22,000円ですからね。

27,500円の月謝単価を実現するには、相当の実績か相当の付加価値が必要だと思うんですよね。で、当然開業時には実績はない訳じゃないですか。じゃあ自立型個別指導塾の月謝を高くするための付加価値って何ですかね?

これって結構矛盾してて、自立型個別指導塾は人件費かからないから月謝を安く提供できる、って言う前提がありませんか?27500円の月謝単価って、いわゆる従来型の個別指導塾の単価より高い可能性ありそうです。先生は質問に答えてくれるだけなのに月謝が27500円って…。かなり厳しい戦いになりそうじゃないですか?

で、私はこういうことにはしつこい性格なんで、いろんな自立型個別指導塾のホームページで月謝確認してみたんです。一つの塾に特定して載せると「およよ?」って思われてしまうんで、いくつかの塾の平均をとってみました。

通塾回数 週1 週2 週3 通い放題
小学生 5600円 9000円 18000円
中学生 8500円 18000円 27000円 32500円

大体こんな感じの設定なんですよね。で、たぶん皆さん客単価27,500円狙いで週3以上の通塾を想定してるんだと思いますけど…。

Mr.MMr.M

激しく甘い!

ちょっと古い資料ですけど、ベネッセ総合研究所から小中高校生の通塾頻度についての資料が出ています。つまり、週に何回塾に通っているか、っていう資料です。

ベネッセ総合研究所(2013年資料)

週1 週2 週3 週4 週5以上 無回答不明
小5 21.7 49.2 13.4 6.6 0.8 8.3
小6 16.1 46.9 12.3 9.4 9.8 5.6
中1 17.3 54.4 17.3 3.3 2 5.6
中2 17.6 45.7 25.9 5 2.2 3.6
中3 9.5 24.4 30.1 16.4 18.1 1.6
高1 31.7 38.6 15.2 7.6 6.2 0.7
高2 30.7 32.4 20.1 3.9 12.8 0
高3 11.7 22.6 14.5 11.3 38.3 1.6

見てください。で、考えてください。小5~中2までの生徒たちは「週2」がスタンダードなんです。中3になってようやく「週3」がトップ(中3でも「週2」の生徒の割合は多いですね)。

おそらくこの会社の年商シュミレーションが月謝単価27500円を要求しているもんだから、みなさん「週3」とか「通い放題」とかそういう商品用意して、何とか単価27500円に近づけようと必死なんだと思うんですけど、そもそも「週3」とか「通い放題」なんて需要はデータ的に少ないんですよ。

この需要を素直に捉えれば、メインの商品は「週2」になるはず。だから月謝単価は18,000円(もしくは小学生の9,000円)に近づくはずです。そうすると、この会社が出しているシュミレーションには大分?マークがつきますよね。私的には「およよ?」です。

当然この統計データを突破できる可能性はあると思いますよ。超絶な実績作るとか、強烈な商品作り上げるとか。でも、少なくとも「こんな魅力的なシステムありますよ~」なんて生ぬるい謳い文句じゃ無理だと思います。「自立型個別指導は生徒たちの考える力を引き出します。」なんて聞き触りの良いソフトタッチのキャッチコピーでも無理だと思います。

自立を謳うなら、まず自分が自立しましょう!

こういう記事を読むと、たぶん一つに「テメェなんかに何が分かる!適当なこと言いやがって。」と批判をする方がいると思います。それはそうです、私は自立型個別指導塾の内部はほとんど知らないですから(転塾してきた生徒は数人いますけど。)。データ集めて、自分なりに分析して勝手なことを主張しているだけですからね。

もう一つにこういう会社のシュミレーション信じて、経営が上手く行ってない方が「畜生!この会社め、嘘つきやがって!騙したな~。」みたいな意見。私はこっちの意見はホントにダメだと思います。

「テメェなんかに何が分かる」って私に対して怒りをぶつけるのは当然です。自分の信じた道に対して好き勝手言われてる訳ですから。仮に私が自立型個別指導塾を立ち上げていたとして、この記事見てもそう思うかもしれません。(まあ本当に上手く行ってれば「あっそ。」で終わりだと思いますけどね。)

でも、会社のシュミレーションに対して「騙したな。」なんて言う人はダメです。まず第一に会社は騙してない。これはあくまでシュミレーションなんだから。月謝単価が市場平均より高くたって何か工夫をすれば実現可能なのかもしれないし。世の中の多くの生徒たちが週2で塾通いでも、自分のところには通い放題、食べ放題、飲み放題かもしれないし。大体、シュミレーション通りに必ず行きます、なんて口が裂けても会社は言ってないでしょ?

で、第二になんで自分の人生を左右する重大な決断(=独立)するのに、他人任せにするのか?他人が出したシュミレーションをなぜ簡単に鵜呑みにするのか?自立型個別指導塾を立ち上げる気が全くない私でさえ、今回あげたデータくらいネット調べて探せるんですよ?で、提供しようとしている商品価格と市場のニーズのズレを発見できるんですよ(ホントに発見できてるかは分かりませんが…。)?

自分自身が自立型個別指導塾で勝負をかけるんであれば、私なんかよりももっと深くまでリサーチして、分析して、検討すべきなんです。クソ生意気なこと言いますけど、「自立謳うならまず己が自立しなさい。」って話なんです。

乱立極まる自立型個別指導塾の経営者の方々。どれくらいの人が自分自身で調べ、考え、検討を重ねているでしょうか?私の「今後5年で自立型個別指導塾がそこそこ潰れていく」というノストラダムス級の大予言。ぜひ、ノストラダムスの恐怖の大王と同じように外れることを祈っています!