恐怖の退塾電話

授業が終わりホッと一息。時計の針は夜10時。

突然電話が鳴りだす…

学習塾経営、もしくは学習塾に勤めている人ならこの電話の意味わかりますよね?

問い合わせの電話!?

そんなわけありません。夜10時に問い合わせがあったら天地もひっくり返るくらい衝撃です。

この電話は別の衝撃を持っている…

それをあなたはよ~く知っている…

震える手で受話器をとるあなた…

「もしもし、〇〇学習塾です。」

「あ、いつもお世話になっております。〇〇の母ですけど、今、お時間大丈夫ですか?

「今、お時間大丈夫ですか?」・・・

 

夜10時のこの言葉…もうあなたは悪い予感しかありません。

いや、「今、お時間大丈夫ですか?」この言葉を聞いた瞬間に悪い予感が当たったと確信している。

「今、お時間大丈夫ですか?」この言葉だけで電話の内容は全て分かっている。

その先に続く言葉は、ほぼ確実に…

「塾を辞めたいのですが…」

教室の天井を見つめ、閉じたあなたの瞳から一筋の涙が頬を伝う…

退塾は防止が一番

塾にとって死活問題の退塾。

生徒が一人減る、売り上げがその分落ちる、われわれ零細個人塾には傷口にラー油塗るくらい痛いことです。

さらに退塾はお客様から「信頼されてない」というサインですので、仕事自体を真剣に見つめ直さなければいけません。

「塾を辞めたい。」お客様からこの言葉が出たら、それを止めるのは至難の業。ビール腹の我々中年男性がハーフマラソンを2時間以内でゴールするのと同じくらい難しい。

だから退塾は防止が一番なんです。「塾を辞めたい。」という言葉が出ない状態を常に維持していくことが大事なんです。

そのためには信頼を得ること、それが全てです。

学習塾が信頼を得るためにできる最も重要な2つのこと。

成績を上げることお客様とコミュニケーションをとること

これです。この2つをなくしてあれこれ手を尽くしても、いずれ生徒は塾を辞めます。

退塾を防止するためにこの2点だけは徹底して意識しましょう。 ☞定期テストに関して

止められる退塾、止められない退塾を見極める

退塾は防止するのが一番ですが、それでも現実には退塾案件は出てきます。

退塾案件が出てきたとき、私はどうするか?

止められる退塾止められない退塾、この2つを見極めて止められない退塾については労力は使いません。

止められない退塾については、もう潔く手続きして反省に繋げます。止めることには労力を使わず、反省と分析に労力を使いたいのです。

しかし、止められる退塾に関しては全身全霊で臨みます。

私のようにエネルギータンクが小さい人間は、エネルギーの使いどころを見極めないといけません。

ターミネーター2のT-800のように予備電源なんてないんですから。

 

退塾時の話に生徒本人が塾に話に来るかどうか、ここがポイントです。

 

電話だけ、保護者だけ、生徒が辞めるという意志を直接伝えに来ないパターン。顔を見せないパターン。これはもうお手上げです。

生徒の心は完全に自分の塾から切れています。信頼関係が破綻しています。このレベルの退塾案件は情けないですが、今の私には手に負えません。だから私はスパッと諦めます。

だから必ず確認するんですね、「最後に一度、ご本人と直接話すことできますか?」と。

ここで「No」ならもう無理です、なぜ退塾にいたったのか反省・分析のフェーズに移行します。

保護者と一緒でも生徒が直接塾に来るパターン。ここは絶対に譲りません。学習塾の代表として、スタッフのリーダーとして、まさに「負けられない戦いがそこにはある」です。

生徒が直接来てくれるということは本人がまだ自分たちを信頼してくれている。そして、どうにかしてほしいと少しは思っている。何か言ってほしいと心の底では思っている。

売上はもちろん大事ですが、それ以上に自分の仕事の誇りがかかっています。このパターンであれば、必ず止めましょう。

※ちなみに成績不振などにより、保護者が塾を辞めさせたいという場合は止めようがありません。その場合、あなたの指導に商品価値がないとの評価ですので速攻で猛省しなければいけません。

面談での話し方

あえて止めない

「必ず止めましょう。」と言っておきながら矛盾しているようですが、話の冒頭はあえて退塾を止めません。

「辞めたいのか?それは君の自由だから、私は止めないよ。」と。

多くの学習塾の経営者、教室責任者が退塾に関しては非常に敏感です。もちろん、私もそうです。

しかし、お客様の情報力が高まっている今、「退塾しようとすると塾の先生に強引に止められる。」という認識が広まっているように思います。

だから「いや、ちょっと待って。もう少し良く考えてみようよ。」何てわれわれが言ったら、「ほら、来た。この先生も止めて来るぞ。」となって臨戦態勢に入ってしまいます。

生徒はこっちの説得を聞きながら、頭の中ではどうやって断るかしか考えていません。

我々だって営業電話が来たら「あ、営業電話だ。」ってなって、その後お決まりの営業トークがべらべら始まれば、頭の中は「何て言って断ろうかな。」って想像しか、しないじゃないですか。それと同じです。

追われると逃げるのは、ルパン三世と銭形警部の二人だけの問題じゃないんです。

だから最初はあえて追わない、つまり退塾を止めないんです。

本音をぶつける

「これが君と話す最後だから、少し厳しいことも含め本音を話すよ。お母さん、少し失礼なことも言いますけど許してください。」

こういうセリフを言ってから、自分の本音をぶつけます。ここはそれこそテクニックとか話し方とか気にしません。

私がなぜこの仕事をやっているか、何を誇りに思って生きているか、そういう部分をぶつけます。

学校先生ではありませんので、「先生として」の話は一切しません。

対等に、一人の人間として自分が正しいと思っていることをぶつけます。

話しているうちに熱くなって、お母さんの前で生徒のことを「オマエ」とか言っちゃうときもありますけど、もう気にしません。だって、ここでダメならもうこの生徒と会うチャンスはほぼない訳ですから。

この本音をぶつけるというフェーズが退塾を止めるための一番重要な部分になりますが、それぞれの先生の魂の部分ですので何を言ったらいいかの正解はないと思います。

きれいごとを言うようですが、あなたの仕事に対する誇りとかその生徒に対する情熱が試されている部分。だから「気持ち」がなければ何を言っても無駄。逆に「気持ち」があれば何を言っても伝わるのかもしれません。

突き放す

自分のエネルギーを全身全霊でぶつけたら、最後に突き放す。

「私は言いたいことを言わせてもらった。君は何か言っておきたいことあるか?なければ教室にある荷物をもって帰りなさい。塾を辞めてもしっかりやれよ。」と。

反応をしっかり確認してください。「はい、分かりました。」で即帰るようなら、こちらの負け。もう追っても仕方ないです。反省・分析フェーズに移行です。

でも、何か言いたそうにしている。表情が明らかに変わっている。でも、お母さんの前で言葉に出しにくい。そういう様子が見て取れたらチャンスです。

多くのパターンでお母さんが「分かったの?ちゃんと何か言いなさい。辞めるの?辞めないの?」というような促しを始めます。

でも、我々はお母さんの促しを安易に許してはいけない。基本的に中学生は親に対して反発心を持っていることが多いです。とくに退塾するかどうかの状況においては、親子関係が良好であることの方が珍しい。

お母さんが話の主導権を握り続けると生徒はやけくそになって「うるせぇ!辞めてやる!」ってなることがあります。生徒が何か迷っているようなら、こちらが主導権をとらないといけません。

 

「やれるのか?」この一言をぶつけましょう。

 

ここで生徒のNoがはっきり出ない限り、退塾はあと少しで止まります。

はっきり止める

「やれるのか?」この一言で、生徒がはっきり「やれます!」と言うことはほぼないです。

当たり前です。退塾しようと悩んでここまで来た生徒が簡単に「やれる」とは言いません。

自信をなくしているんです、迷っているんです、自分が果たしてやれる人間なのかどうか。

我々からはっきり言わなければいけません。

 

「やれ」と。「じゃあ明日から普通に来い。」と。

 

「やれるよな?」とか「明日から来れるかい?」はダメですよ。

最後ははっきり止めるんです。もう命令です。

ここまで黙ってあなたの話を聞いてくれ、あなたの話を理解してくれようとしている。

その生徒はあなたのことを少なからず信頼している。

この人だったら、自分の成績を何とかしてくれるかもしれない、少なからずそう思っている。

あなたに強い言葉を期待している、自分を動かしてくれる強い言葉を。

保護者の前だからと言って遠慮してはダメです。

その生徒の退塾を止めることによって、その生徒はよりよい未来を手に入れられるんですよね?成績が上がるんですよね?今この瞬間、生徒に魂をぶつけている瞬間においては、売上のためでは決してないですよね?

そうであるなら、自信をもってはっきり止めるべきです。それがその生徒のためなんですから。

 

元も子もない話になりますけど、自分自身が誇りを持って、自信を持って仕事をしていないとたぶん退塾は止まりません。

止めようと思っても心を見透かされますから。

自信をなくした生徒を目の前に、頭の中で売上ばかりを気にしているような先生だったら、たぶんこういう勝負の場さえ与えてもらえません。

今回の退塾を止めるというテーマは、自分が誠実に仕事に臨んでいるかどうかがまず前提になります。

その前提なくしてテクニックに走っても何にもならないと私は思います。


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